der Zipfel

daily diary : started on October 05 2005.

note;text_2005






ナキゴエとサケビゴエと  

水分の中の小鳥たちの鳴声は どうしてこんなにも透明でここちいいのだろうって.今朝は 少し肌寒いくらいの小雨.仕事をしているところから ベランダに作ってある オオモリレストランの様子がよく見える.急ににぎやかになって振り返るとちびちゃん達が まさに鈴なりになって食事中.小さい頭をふりふりして にぎやかなことといったら.見ているとケンカしていたり 少したまっている水で羽を洗っている子もいる.屋根に乗ろうとして すべってしまったりする様子に笑ってしまうし そうして なんだか泣きたくなる.小さい鳥たちの様子を見ているといつもそんなだ.鳴声のトーンは いくつか聞き分けられる気がする。きっと いろんなことを話しているんだろうな.小雨のなか レストランの軒下に並んでいるちびちゃん達の尾羽をぴょこんっと上にもちあげている様子が なんだか独り笑い.そっと指先でその輪郭をなぞってみる.小さな形.寒い冬の雨じゃないせいか なんとなくちびちゃん達は 小雨を気持ちよさそうに感じているような気がする。雨の季節が 終わったらオオモリレストランを改装する予定.暑い夏に水浴びや砂浴びもできるように小さなプールを作ってあげようって思っている.日陰になるような場所も.

9時を過ぎても雨の日はとても静か.車が雨を飛ばして走る音が 遠くで聞こえるくらいだ.

そうして あぁ そういえばこの頃 叫び を聞いていないなってふっと思う.どうしたのだろう.心配になる.その声が聞こえるようになったのは 最初からだった気がする。ここに越してきてから.朝早くにベランダで洗濯をしていると 聞こえてくる.風に乗って.なんと言っているのかは聞き取れないのだけど 男の人の声.それは ほんとうに心がしめつけられるような叫び声なのだ.初めて聞いたとき 一日憂鬱だった。どこから聞こえてくるのだろうって 早朝の外の様子を見てもしんとしていて その声が発せられた場所なんてわからない.長く続くわけではない.ほんのひととき。そして それは ほとんど毎朝だった.聞きたくなくて 洗濯をしないこともあった.でも ベランダに出なくてもあけた窓の向こうから 聞こえてくる.聞こえてくるというよりも私の耳が探し出そうとしてしまうかのように その声を拾ってしまう.一日憂鬱になり 聞くごとに半日憂鬱になり 数時間憂鬱になり 数分憂鬱になり そんな風に時間が経っていった.声の様子は 変わらない.なにを叫んでいるのかわからない.何年もそんなだった.ごくたまぁに夕方にも聞こえた.でも はっきり聞こえるのだから きっと窓辺から外に向かって叫んでいるのだろうなって考えた.家の中からだったら こんなにはっきりは聞こえない.

 そうして 数年前にその場所が どこからなのかがわかった.いつものように 早朝にその声が聞こえてすぐに追いかけるように女の人の声が たしなめるように叫ぶ人の名前を何度か呼んでいた。具体的な名前は聞き取れなかったけれど 男の人の名前の印象だった.女の人の声は きっとその人の母親なのだろうと思った.そして 私はその女の人の声を知っていたから.私が住んでいるビルのすぐ真向かいのお家の人.とてもきさくな下町の人って印象.その人が そのサケビゴエの人をたしなめる女の人の声の人だった.いつものきさくな声のトーンとは違っていたけど 確かにその人の声だった.聞いたのは その時一度きり.6階だから そのお向かいの2階建てのオウチの屋根全部が見える。空から見ているように。そのオウチの輪郭の中にサケビゴエの人がいる.もちろん姿を見かけるようなことは一度もない.もう12年くらい サケビゴエを聞いている.もう憂鬱になることはない.むしろ 聞くと ほっとするような気持ちになるようになっている.何故なんだろう.自分でもわからない.サケビゴエの人の耳にも ちびちゃん達の雨のなかの透明なかわいらしいナキゴエが聞こえるといいなって 今朝思った.

_2005 ギャラリー現 個展に掲示




works title

嘴仕事

孵らないコト

チイサナコ

鳥語を話した夜に

囀り

頭屋の場所

卵語

孵語

声袋

蓄語

孵るタメノ

窮鳥の休む場所

庭師の肖像

サケブヒト ノ タメニ






 

photo by yun
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